帝国とその周辺に関する簡易案内(第1版)
帝国地理学会

司書の注釈:

この簡易案内はタイバー・セプティムの治世の初期に書かれており,帝国のプロパガンダや偏向情報を含んでいる。従って,タムリエルとその住民に関する概観であるのみならず,それらの土地や住民がどのように帝国から見られているのかに関する概観でもある。

この帝国による文書のほかに,強い反帝国感情を持ったエルフと思われる“Y.R.”による注釈が随所に記載されている。Y.R.の注釈は本文の下部に赤字で記載され,それらが参照している本文の部分も同様に赤字で強調されている。

この文書は共通紀(現在は第2紀と呼ばれているものを指す)を使用している。

私達の書き写しは『簡易案内』の最終版では入手できない情報を含んでいる。これらの情報はマイケル・カークブライド氏が本図書館に提供した『簡易案内』の設計文書から抜粋されたものである。


諸々の土地
住民の多様な風習
さらには
位置および影響力における
特質のゆえに興味深い
地域の有益な歴史
について

賢帝タイバー・セプティム陛下の
真理と知識への不動の献身に捧ぐ

帝国地理学会の権威の下に公表する

共通紀864年



諸帝の末裔,天と地の王
光輝の万軍の主
忠臣,公民,従僕の守護者
権利と正義の保証人
王座と権威の広き恵み
天に輝く道しるべ
至高のタイバー・セプティム

八の祈祷と十六の容認されうる冒涜

アカトシュよ,汝の永遠からなる止まり木は日を与えた
キナレスよ,汝は男の息を返す
ディベラよ,汝は男に悲嘆で報いる
アーケイよ,汝はディミヌエンドに屈しない
ジュリアノスよ,汝は忌まわしい方程式を唱える
マーラよ,汝は空虚を満たし岩々を流し去る
ゼニサーよ,汝は我々に安楽をもたらす
ステンダーよ,汝は読者に寛大なり

りな泉のきめらひは汝,よアィフイボ
りな心良の間人ば半は汝,よンーシーハ
る語に横を葉言のてべすは汝,よスャキラマ
りな陽つ立え燃は婦情の汝,よンゴイデ・ズンールーメ
りな手し癒の人は汝,よスラゴオーシ
りな快不に低最は息の,よルバ・グラモ
る残く永は品作の汝,よラミナ
す通に針を髪の妻は汝,よラーァフメ
るえ応に常は汝,よルイァヴ・スカィヴラク
りなクンミはりわざ手の汝,よルナータクノ
りな石落は石礎の汝,よトイアリペ
りなちふの穴のてべすは汝,よラーズア
りあ実充に内の汝,よアィデリメ
つ持を紙る至に光は汝,よラモ・スメーハ
うわ味を実果たれら剃は汝,よンイグンサ
りな手り織の装盛は汝,よマニーァヴ

ようこそ,市民諸君!

新時代の幕開けを前にして,よりよく前途を照らすために,我々はどこにいたのかを,我々はどこにいるのかを,判断するべきときである。本冊子は,すべての人間王国がシロディール皇帝の不動の支配に復することを示したハンディング湾の戦いを祝して書かれ,現在の帝国属州と周辺地域についての簡潔な解説(歴史,人物,現状)を目的とする。我々は,正確性および完全性と,適時性との釣り合いをとるように努めた。この有益な案内を関心ある市民の手へどこであれ届けようとする熱意に誤りがあるとしても,どうか寛大なる読者諸氏のお目こぼしを頂きたい。

帝国はタムリエル──知られているうちで世界最大の大陸──の全土に広がっている。タムリエルの北方ではアトモーラがあり,そこからこの世界の人間はやってきた。西方ではヨクーダがあり,レッドガードの失われた郷土である。東方ではアカヴィルがあり,その軍勢は前代にタムリエルを侵略した。南方では一切が謎であり,エルフの失われた郷土であると噂されている。

タムリエル自体はおおむね8つの主要地域に分かれる──スカイリム,シロディール,ハイロック,サマーセット諸島とヴァレンウッドからなるアルドマー領,ハンマーフェル,モロウィンド,エルスウェーア連盟。これらのうち,あるもの(モロウィンドやスカイリム)は歴史上統一されていた王国であり,そのほか(ハイロックやエルスウェーア)は有力な種族や文化の下に統合されていた多くの王国・族長領・村落連合などの緩やかな集まりである。絶頂期の第二帝国はこれら異質の集団を帝国属州として正式に組織し,シロディールから直接に派遣されるか,原住民から任命される属州総督がこれらを統治した(モロウィンドは特筆すべき例外であり,シロディール第一帝国に征服されなかったため,帝国属州として〔帝国から〕投資されないままである)。シロディール帝国が崩壊すると,主導権は各州の各支配者に復し,属州の多くが独立した王国や微々たる小国に移る中で,数世紀にわたる混乱がもたらされた。現在,幸運にも,すべての人間王国はタイバー・セプティムの第三帝国に取り戻されており,それらはいずれも帝国属州という誇り高い称号を再び身に着けている。

アルドマー領,エルスウェーア連盟,モロウィンドは帝国に未加入であるが,学者を啓発するために,一般市民を魅惑するために,兵士を準備させるために,本書で解説してある。第三帝国は未だ若く,やがてレッドダイアモンドの旗の下で夜明けを迎えるその新しい地平線がいかなるものとなるのかを誰が予言できるだろう。

いくつかの地域は住民である獣人が原始的な文明を有するゆえに属州という分類から外れている。これら獣人の“国家”は未開地域という総称で知られているが,皇帝の利益に資するかどうかは不明である。それらを収めてあるのは,もっぱら,大胆不敵な旅人のため,また,これらタムリエルの暗部と比べることで文明の成果をより鮮やかに浮き彫りにするためである。

さて,市民諸君,帝国領土についての我々のささやかな調査をご批評いただけるように切に望むところである。もしも楽しみ学べたならば,筆者の些細な苦労ではなく,親愛なる皇帝の恵み深い仁愛に思いを致していただきたい。まさにその御名は舌上のアムブロシアの如しであり,この調査を作成してタムリエルの真摯かつ賢明なる人々に配布するように,賢明にもお命じになられた──これら諸国と諸領の栄光や課題を彼らがよりよく理解できるように,また,陛下が我々の名の下に途方もない忍耐で耐えていらっしゃる君主たることの重責に彼らがよりよく感謝できるように。


エルフの名称に関する注釈:エルフは総称として「アルドマー」や「古の種」と呼ばれることがある。彼らの各々の血統も同様に,人間風の名称とアルドマー風の名称の両方で呼ばれる。たとえば,ハイエルフは「アルトマー」,ダークエルフは「ダンマー」,ウッドエルフは「ボズマー」など。「マー」はひとりのエルフを示すのにも使われる。それゆえ,ある職業や商売のエルフ族を示す言葉は,正確には,たとえば「クラフトマー」や「ノーブルマー」であるといえる。