シロディール
帝国地理学会

シロディール,〈竜の帝国〉,〈ナーン星の中心〉,〈群王の座〉――ノルドの歴史がタムリエルにおける人間の歴史であるならば、シロディールとはまさに彼らがその運命を決するところの王座である。 大陸最大の地域であり、その大半は果てしないジャングルである。その中央にあるニベン川流域の草原は赤道直下の熱帯雨林に囲まれ、河々に分かたれている。これらの河沿いを南下するにつれて亜熱帯の趣は強くなり、ついにはアルゴニアの湿地やトパル湾の穏やかな海原に行き着く。標高は西に向けて徐々に、北に向けて急激に高まる。西海岸と中央流域の間にはあらゆる種類の落葉樹林やマングローブが生い茂り、それらは海が近づくにつれて疎らとなる。西海岸は半湿半乾の地帯であり、リハドとの国境からアンヴィルやヴァレンウッド北端の村々にかけて森林火災が夏の常である。西に伸びる主要路や北に向かう河岸道がいくつか、またヴェロシ山脈に通じる天蓋トンネルさえあるものの、シロディールの大半はジャングルに囲まれた河川に基づく社会である。

Cyrodiil, Dragon Empire, Starry Heart of Nirn, and Seat of Sundered Kings... Indeed, if the history of the Nords is the history of humans on Tamriel, then Cyrodiil is the throne from which they will decide their destiny. It is the largest region of the continent, and most is endless jungle. Its center, the grassland of the Nibenay Valley, is enclosed by an equatorial rain forest and broken up by rivers. As one travels south along these rivers, the more subtropical it becomes, until finally the land gives way to the swamps of Argonia and the placid waters of the Topal Bay. The elevation rises gradually to the west and sharply to the north. Between its western coast and its central valley there are all manner of deciduous forest and mangroves, becoming sparser towards the ocean. The western coast is a wet-dry area, and from Rihad border to Anvil to the northernmost Valenwood villages forest fires are common in summer. There are a few major roads to the west, river paths to the north, and even a canopy tunnel to the Velothi Mountains, but most of Cyrodiil is a river-based society surrounded by jungle.

シロディールの歴史が真に始まるのはアレッシア改革(補足記事『アレッシア教団』を見よ)の中頃であり、当時の文明と教養はこの地域をタムリエルの明白な大国たらしめた。その文化と武力が集中したのは神聖なるニベン川流域、中央に広い湖を持つ草原地帯だった。この湖からいくつも突き出る小島をまたぐように首都は広がり、〔それらの小島は〕橋々やゴンドラ舟により縦横につながれていた。その都市国家は有益な辺境とも、スカイリムやペリティンの友好的な内陸港とも河川により結び付いていた。米と織物や、さらには革鎧・ムーンシュガー・アンセスター・シルクなど、より内密で貴重な品々が主な輸出品だった。シロディールの活躍の舞台が単純に広大だったこと、またエルフによる独裁期間が頻繁に発生したことから、その統一の過程は総じて遅く、しばしば妨げられた。アレッシア〔教団〕の影響力が最高潮に達したころ、その西の腕はコロヴィア地区として束の間の自治を、すなわち現代において外人の帝国観を今も彩る境界を享受した――しばしばシロディールは東部と西部という双面を持つため、その〔分裂〕以後に関する社会史上の議論は何であれ、この初期における分裂の要約から練り始めねばならないのだ。

伝統的に、東部は当地の魂として尊ばれている――高潔、寛大、指導的。ニベン川流域の熱帯雨林において、シロ゠ノルドの初期諸部族すなわちニベネイ人は文化的にも経済的にもスカイリムから離れて自立を学んだ。第一帝国によるエルフ迫害は〔ニベネイ〕流域軍のための精鋭援軍として戦魔師を生み出した。北方から河川商路に沿ってアレッシア教義が浸透する頃には、こうした魔術師は支配貴族となっていた。たちまちアレッシアの司祭は彼らに取って代わり、その不可解なほどにカリスマ的な宗教は下層階級に足がかりを手に入れた。ノルドの伝統的な八大神殿は祖霊と神獣に対する奇怪な崇拝や、浮動的ながら一神教であるアレッシア信仰の教義が奨励するしきたりに座を奪われた。その教義は、ついには、東部文化のほぼあらゆる側面を体系化した。隆盛した動物崇拝の感情と結び付き、ある種の肉食が制限されることにより、まもなく農耕と畜産はほぼ不可能になった。そのため東シロディール人の多くは商人への転職を余儀なくされ、これによりニベン川流域は当地で最も豊かな都市国家になっていった。しかしアレッシアの支配下では、いかに商人階級が富裕で強大になるとしても借地市民にすぎず、彼らが司祭に払わねばならない十分の一税はその国の真の主を常に思い出させるものだった。

西部はシロディールの“鉄の手”として敬われている――堅固、不動、絶えざる警戒。当地に定住したシロ゠ノルドは、はるか昔に肥沃なニベン川流域を放棄してこの辺境の征服を決意した。彼らの原始的獰猛性は魔術やものづくりの欲求へ向かわず、むしろ血闘や略奪が好まれた。西部人はストリデント海岸にあるネドの港町を攻略すると制海権の獲得に着手した。彼らは最初期の航海によりイリアック湾やブルーディバイド岬に到達し、およそ第1紀810年に(当時は)格上のヨクダ海軍が登場するまで、毎年その港町を襲撃していた。アレッシア改革の時代には西部人は地理的にも社会的にも地位を確立しており、この教義に抵抗した。北方の隣国ハンマーフェルは当国の聖なる復讐結社ラ・ガダにより今や身を守り、その外人に対する好戦的不寛容が西シロディールとアレッシア司祭の間で緩衝材として機能した。それゆえ西シロディールの八大神殿は自由に存続し、アレッシア色を強める東部との関係は緊張した。最終的には、西部はニベン川流域の神政的覇権から独立してコロヴィア地区という自治政府を樹立した。

こうした情勢は、タムリエル人口の過半(特にスラスに最も近い西部沿岸)が大量死した、第1紀2200年のスラス疫(自由地域『スラス』を見よ)まで続いた。コロヴィアのアンヴィル王ベンドゥ・オロが総旗艦海軍を指揮してスラスのナメクジ人に勝利すると、シロディール人の威光は世界中に知られるようになった。当時はコロヴィア地区より富裕で人口の多かった東部の影が薄くなり始めると、ついに正義戦争が勃発してアレッシアの支配に終焉がもたらされた。ニベン川流域の支配権は重商魔導主義に復したものの、それは西部人の感覚からしてやはりひどく神秘的であり、シロディールの再統一は考えられるものではなかった。もうひとりの誇り高い西部の息子であるレマン1世が流域軍を結集して自軍〔コロヴィア軍〕に編入し、そして第1紀2703年のアカヴィル侵略を戦うまで四百年は過ぎていただろう。シロディール軍は北部全域においてアカヴィルと交戦し、ついにはスカイリムのペイル道で彼らを降伏に導いた。戦が終わる頃には、みずからが一国として団結しているのみならず、北方の人間王国全体に対して一層の防衛義務があることをシロディール人は理解した。〔シロディールの再統一と人間王国の防衛義務は〕新たな人間帝国主義であるとしてサマーセット諸島のエルフが不快を示したとき、レマンはそれらが正当であることを証明せねばならなかった。すでに弱体化していた北方諸王国に対するエルフの攻撃を阻止するため、「わが未来の領土において人間による第二帝国軍の中核として貢献するならば」という条件で彼はアカヴィル軍の捕虜に大赦を与えた。レマン自身の皇朝は二百年にわたり、その間にモロウィンドを除くタムリエルの全王国を征服した。レマンの世継はダークエルフのモラグ・トングにより殺され、その最後かつ正統なるシロディール皇帝の死はまさに共通紀の始まりを告げるものだった。

シロディール帝国は以後の四百年にわたり〈アカヴィル有力者〉(補足記事『第二帝国』を見よ)の庇護下で存続・衰退すると、これに類するほど続いた〈空位期間〉として知られる反乱・無法・権力喪失の時代にさらされた。しかし、東部と西部が共に計り知れぬほど分裂しようとも、シロディール帝国の遺物は死を拒んだ。コロヴィア地区の小王クーレカインは台頭すると、その軍団の将軍としてひとりのアトモラ人を任命した。タロス将軍はスカイリムに学んでス´ウムを操った。彼のときの声に軍勢は走り逃げ、叫びに雑兵は倒れ伏した。1年後、シロディール帝国の半分以上を回復・併合すると、ニベン川流域への進出、首都攻略、そして皇帝宣言の時機であるとクーレカインは判断した。このとき、シロディール支配の再来に激しく抵抗するハイ・ロックとスカイリムは、コロヴィアン・ウェストを共同侵略するため軍勢を結集した。タロスはサンクレ・トールの戦場で彼らと対峙した。帝国に仇なしてきたノルドは、まもなく将軍に加勢するようになった――そのス´ウムを聞いて、彼こそスカイリムの息子にして人間帝国の継承者であると悟ったのだ。クーレカインの新将軍の話と共にハイ・ロックへ退けられたブレトンは、そこで皇帝の魔術に自身の魔術で対抗することを決意した。共通紀854年、ひとりのウェスタン・リーチ出身のナイトブレイドがニベネイ帝宮に到着した。そこで、そのウィッチマンは皇帝を暗殺して宮殿に放火し、そしてタロス将軍の喉を切り裂いた。「しかし、くすぶる廃墟から現れた彼の、一方の手は喉に当てられ、他方の手はクーレカインの王冠が握られていた。その光景に軍団は涙を流した。彼の北方の魔術はその身を救ったが、彼らを導いてきた声はその夜より咆哮を失うことになった。彼の言葉がもはや咆哮により軍勢を敗走させられなくとも、彼はささやきにより人に命じることができた。彼はシロディール風の名前としてタイバー・セプティムを、ノルド王風の名前として〈北の竜〉イスミルを自称した。そして、これらの名前と共にシロディール人のレッドダイアモンドの王冠も手にした彼は、彼らの真の皇帝となった。」こうして人間の第三帝国は誕生した。

第三帝国におけるシロディールは、その古代の遺産が若々しく力強く具現したものだった。国内では、信じ難いほどの復興を経験した――帝都の廃墟区域はほぼ完全に復元され、〈空位期間〉に破壊された道路や都市は再建され、東部と西部は4世紀ぶりに統一された。シロディールの現在の安定と勢力は、レマン朝以来、見られるものではなかった。実際のところ、それらは同様の状況で誕生した――西部人が東部の王座を勝ち取り、その〔東部と西部の〕両者をタムリエルの最列強国に鍛え上げたのである。そしていまや、わずか20年の間に、タイバー・セプティムはハイ・ロック、スカイリム、ハンマーフェルに帝国の権威を確立した。すべての人間地域が彼と共にエルフの脅威に抵抗している。皇帝は率直にも彼の成功を臣民であるコロヴィア人とニベネイ人の貢献によるものとした――では、その彼らの文化が現在はいかなるものであるかについて触れてみよう。

今日のコロヴィア人も彼らの先祖と同様の開拓精神を大いに具えている。彼らは単純・自信家・親切であり、お互いにとても義理堅い。東部が軟弱な指導者の下で身を震わせているときはいつであれ、コロヴィア人は民族精神が守られていることを常に信じ、その嵐が過ぎ去るまで己の殻に身を引いているだろう。ニベン川流域が帝国の心臓でありその文明の文化的中心であると考えられているが、それは皇帝の個性という力によりまとまっているにすぎない脆弱な中心である。彼〔皇帝〕がつまずくとき、コロヴィア人もつまずく。しかし、彼〔皇帝〕がタイバー・セプティムのように強大ならば、彼ら〔コロヴィア人〕はその軍団である。今日、紅玉隊における兵士の大半は西シロディール人が占める。コロヴィアの貴族、帝国軍団のあらゆる将校、また西部海軍は、首都の宮廷生活で見られるような奢侈をみずからに許さない。むしろ彼らが好むのは、簡素な断崖要塞の天井から吊り下げられた清潔な制服と素朴な軍旗である。今日に至るまで、大仰に飾り立てられた“色彩の襲撃”である帝宮を訪れねばならないとき、彼らは困惑気味となるのだ

[旅人:「帝国の人間地域のために属州総督として任命されるのはコロヴィアの将校というのが伝統になっております。というのも、そこで求められることが多いのは帝国兵士のうちでいちばん誠実な人間であるからです。」]

シロディール東部の人々は、対照的に、華美な衣装、奇抜なタペストリー、タトゥー、焼印、入念な儀式を好む。文明の源泉により近い彼らは、それだけ哲学や古代伝統の発展にふけっている。ニベネイ人は周囲の万物に神霊を認めており、そのため彼らの多様な宗教は書き切れないほどに膨大である(最も有名な物は祖蛾教、英雄信仰、タイバー・セプティム信仰、零帝教である)。東部における祖先崇拝や秘教的慣習はコロヴィア人にとっては奇妙となりがちである。アカヴィルの竜飾りは、帝都にある高い塔橋から、村人が死者を川に流すための紙の方舟まで、あらゆる地区において目にするものである。数千の働き手が氾濫後の稲田に精を出し、また周囲の密林の葉々を一季節おきに刈り取る。彼らの上には商人貴族、神殿司祭と宗教指導者、そして老貴族たる戦魔師がいる。その彼らすべてを、あたかも頭上を回る竜のように、皇帝は帝都の塔々から見守っている。


名所

帝都

「帝国領に都市はただひとつである」というレフェイユの有名な宣言はコロヴィアン・ウェストの市民には侮辱めいて聞こえるかもしれないが、それは残りの言葉を耳にするまでのことであろう。こう続く、「タムリエルに都市はただひとつ、世界に都市はただひとつ――それは、兄弟よ、シロディール人の都市である。」岸辺から都市や宮殿の様子を窺い知ることは難しい――その何もかもが湖の島々から金色に広がる空へとそびえているからだ。このあたりで頼りにされるのは島々を結び合う宝石飾りの橋々である。水に浸る低い家々の水路をゴンドラや川舟は帆走する。蛾僧が”祖先”の大群の中を過ぎ行く、四つ辻では綬章と竜旗で身を飾る近衛兵が並外れた長さの大刀を十字に差す、新参の西方兵士が湿気に汗を流す。河口は岸辺のチンミ土で赤く汚れ、河竜の皮はその水で錆びている。帝都は湖を越えて続いており、南の赤い河沿いにある村々や〈空位時代〉から残る廃墟に溶け込む。帝宮は魔法の庭園に囲まれた陽の冠である。園路のひとつは〈皇帝の緑道〉として知られている――ここでは歴代皇帝の頭部がしゃべるトピアリーとして魔術により作り出されてきた。〔歴代皇帝の頭部の〕誰かがタイバー・セプティムに忠告せねばならないときは、生垣の頭部に引き寄せられた鳥の歌を声として、そして必要な表情のために枝を動かすのだ。


記事

アレッシア教団

この一神教はかつて非常に人心を集めたが、今日では教義の断片が残るばかりである。その始まりは、現在のコロヴィアン・ウェストに当たる沿岸の密林において、マルクという預言者が“覚者”聖アレッシアへの語りかけのうちにエルフ支配の正当性を問い始めたところだった。こうした感情は、ある唯一神についての、次第に抽象化されて不可解となる表現につながった。アレッシア教徒は賢明にも、彼らの新興宗教が広く受け入れられるためには、古代多神教の要素を取り込まねばならないことを心得ていた。多様な人間とアルドマーにより信仰されたその神の諸側面は、発展していくアレッシア聖典における無数の聖人や聖霊という仮装の内に認めることができた。教団はまもなくタムリエルのあらゆる宗教中の権威となり、彼らの勢力は地を揺るがすほどに拡大した。第1紀のおよそ三分の一は彼らの神政統治の下に過ぎた。その司祭集団があまりにも広がりすぎて自活できなくなると、教団は内紛を開始した。西シロディール領が〔コロヴィア地区として〕帝国から離れると、実に多くの金銭と土地が失われることになった。正義戦争は勃発し、そして世界を支配しかけていた教団は10年の間に自壊した。

第二帝国

第二帝国は2期に分かれる――レマン朝と〈アカヴィル有力者〉である。本文で述べたように、アカヴィルの侵略者の敗北後にレマンは彼らの多くを自軍に採用した。後にシロディール人はアカヴィル近衛兵を伝統的に置くようになり、皇帝の首席顧問である〈有力者〉はたいていアカヴィルの血筋だった。その他のアカヴィルの奴隷は、軍事訓練においてと同様に、第二帝国の行政機構の確立においても重要な役割を果たした。再編された帝国軍団はアカヴィルから統制・兵站・鍛錬について無比の技術を学び取り、他地域の軍勢を容易に圧倒するようになった――まもなく、モロウィンド以外のタムリエル全域がシロディールの支配下となった。凄惨な八十年戦争中にレマンの最後の世継がダーク・エルフのモラグ・トングにより暗殺されると、帝国の支配権は〈アカヴィル有力者〉に復した。彼らは今日の帝国に明白な痕跡を残した。セプティム突撃隊すなわちブレイズの軍旗や軍装と同様に、大刀や竜鱗の甲冑という質の高い工芸はアカヴィルに由来するものである。帝国と帝都を象徴するようになった赤竜は、本来はアカヴィル軍の騎竜だった。アカヴィル姓は今日のシロディール市民において希少かつ貴重な財産であり、多くのシロディール名家にアカヴィル特有の容貌が残っている。いくつかの”正統アカヴィル”の集落が帝国内と国境地域のいずれにも現存するものの、そのように呼称されるのは彼らの慣習と風習のゆえにすぎず、その純血のゆえではない。

タイバー・セプティムの歌(『頌歌集』より)

「アトモラにタロス(古エールノフェイ語で”嵐の冠”)として生まれ、その岸辺から船出した。スカイリムでノルドに交わり青春を送った。そこで〈舌〉と彼らの族長と、その戦術から多くを学んだ。二十でオールド・フロル’ダン攻めを率い、ハイ・ロックのウィッチマンとその血族から当地を奪い返した。」
「まもなく、グレイビアドの不穏が知られるようになった。すでに彼らのささやきから嵐が生まれ始めていた。グレイビアドが語ろうとしていた。周囲の村々はきたるべき疾風から逃れる人々により打ち捨てられた。」
「村人はタロスに引き戻すように忠告した――彼はグレイビアドの住まう山に突き進んでいたのだ。」
「〔ハイ・フロスガーに〕入った彼を目にするやいなや、彼らはみずからの口枷を外した。彼らがその名を呼ぶと、世界は震えた。」
「スカイリムの〈舌〉はアトモラの息子に告げた――汝はタムリエルを支配することになるだろう、そのためには南へ行かねばならない。」
「そして、まさしく、オールド・フロル’ダンの戦いからまもなくタロスはシロディールを訪れることになった。」
「そして、まさしく、大嵐が彼の到着に先んじていたのだ。」

祖蛾教

シロ゠ノルドは長らくアンセスター・シルクを他地域に輸出してきた――土着のマイマイ蛾の絹で織られて、買手に必要な家系が記された、素朴だが異国情緒あるショールとして。しかし、この宗教において祖先〔アンセスター〕と蛾は同義となった――聖歌をさえずる誰かしらの祖霊を特別な絹集めの儀式で捕えて、その〔絹糸という〕資源をあらゆる種類の衣服や衣装を作り出すのに用いるのだ。この生地が日常の仕草で衣ずれると、そこに込められた燦然たる祖先の合唱が再生される――これはたちまち初期二ベネイ人の間で神聖な風習となり、それは今日まで続いている。この織物の付呪に必要な魔法の儀式は祖蛾教の高僧においては不要であり、むしろ実際にはその蛾を首回りや顔面に身につけるほうを彼らは好む。マイマイ蛾が特に好む木から集めた皮の細かく粉に挽いたものを〔みずからに〕塗布し、ある種のマントラを黙唱することにより、彼らは祖蛾を招き寄せることができる。祖蛾との”肌の触れ合い”を常に保つためには彼らはマントラを唱えねばならない――それは、ある種の宇宙の平衡のために彼らが耐え忍ぶ試練である。たとえば会話のために僧侶がこれらのマントラを中断するとき物を言うたび蛾は燦然として彼から飛び出し、彼が黙唱を再開するときその肌をふたたび照らすことになるのだ。

零帝教

タイバー・セプティムその人により創始されたこの宗教は零帝クーレカインの名誉を称えるために成立した。クーレカインが存命中にシロディール全土を奪還したというのは正確ではないものの、タロスを将軍に任じるとき見せた知恵と帝都を取り戻すとき見せた勇気――新生シロディール帝国という栄光の復活を決定づけたふたつの事件のゆえに彼は崇拝に値する。それゆえ彼は我々の祈りの内に生き続けるであろう。トピアリー魔術師が彼の姿を宮園に作り始めたところであるため、〈皇帝の緑道〉にあるその他の祝福された生垣の頭達と同様に、ゆくゆくはクーレカインがその洞察をタイバー・セプティムに分け与えることになるだろう。